文献から紐解いた木庭作蕎麦の栽培手順
志多留・田ノ浜の伝承や、佐々木高明「日本の焼畑-その地域的比較研究-」、月川雅夫「対馬の四季-離島の風土と暮らし-」によると、過去の対馬での一般的な木庭作の方法は以下の手順で行われていたとされています。
①伐採(木庭作名称 コバナギ)
- 伐採後、1ヶ月程度で枯れるので播種に間に合うようにナタで伐って枯らしておく。カセイを頼み、共同労働をおこなっていた。伐採木の用途としては大きい木は燃料用の薪と一部は傾斜の土が流れないように土留めに使用する。残った小枝は燃えやすいように細切れにする。
②防火帯作成(ホタルザラエ)
- 防火帯(ホタリ)を焼畑耕地の周囲に二間程度(3~4m)の幅で枝葉のないようにさらえる。
③火入れ(コバヤキ)
- 風のない日を選び、風の穏やかな早朝におこなう。焼畑耕地の広さによってカタヨリで4~8人でおこなう。防火帯に間隔をおいて人を配置し、用意が整うと、主が「唱え言」をいう。その後、松の松明に火をつけ、傾斜の一番上に火をつける。さらに上の方から、周りの部分にも火をつけていく。周囲が燃え尽きると木立に燃え移る恐れがなくなるので、一番下に火をつける。すると、一気に斜面に沿って燃え広がっていく。ホタリに立った人は木立に火が燃え移らないように注意し、燃え移る恐れがあれば小枝でたたいて消す。周りに燃え残りがあれば、クマデで中に入れて燃やす。1回目の火入れの後、焼け残った残材を集めて焼くコヤキをおこなっていた。
④播種(コバツクリ)
- 播種は火入れの翌日。耕地の下端に一列に並び、種子を播種し、同時にクワで上から下へ覆土(コバッパル)しながら焼畑の斜面を登っていく。播種量は鳥類に食べられることもあるので、普通畑の二倍ほど播く。また、木庭作の規模は伐る前から播種量で面積を決める。栽培作物は土地の状態によって決まるが主にムギ、ソバ、アワなどである。対馬では初年目作物としてムギが広く栽培されていた。
⑤収穫、乾燥
- 種まきより2~3か月を目途に鎌を使い根元からソバを刈り取る。収穫したソバは束にし、ソバモノイエ(穀物などを乾燥させる櫓)に段組みで掛け天日干しさせる。
⑥脱穀・風選
- イエで1~2週間乾燥させたのち脱穀作業に入る。乾燥させたそばの束の穂の部分を木の棒で叩き、穂から種を分離する(あやす)。唐箕(風を送り不純物の除去や種の分類をする木製の器械)を使い種の選別を行う。
私たちの木庭作栽培(一例)
8月
- 草刈り
- 防火帯整備
- 火入れ
- 耕起
- 撒種
- ツリーハウスの製作
- 開花
11月上旬
- 収穫
- 収穫量調査
- ソバモノイエの製作・補修
- ソバモノイエでの乾燥
11月下旬
- 脱穀
- 風選
12月
- 製粉機を使った製粉
- そば打ちイベント